バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

ペルー

クスコ-4 ~再び征服の爪痕

カテドラルの右側から奥の方へと足を進めてみる。
先ほど、カテドラルやラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会を訪れた時、「征服者によって造られた街と建造物」にやるせなさを感じたものだが、次に訪れた場所では「やるせなさ」だけでは済まされなかった。
宗教美術博物館
宗教美術博物館
その場所とは、宗教美術博物館だ。
まずその外観だが、インカ伝統の石組み建築物が征服者によって破壊され、その後に残った土台の上に西洋風の建築物が継ぎ足された形になっている。他の建造物にも共通していることなのだが、ここではその“征服の爪痕”が顕著に表れている。
ここも先ほど買った通し券で入場できる場所なので取りあえず入ってみたが、内部の展示作は憤りすら覚えさせられるものだった。
まず、征服者に祝福を与える神や天使の絵の数々。これはまだいい。私が最も憤りを覚えたのが、輿に征服者やスペイン女王が乗った場面(女王が実際にペルーを訪れているとは考えにくいので恐らく想像図だろう)を描いたものだった。
インカにおいて輿は、皇帝のみに認められたものである。不遜にもその輿に乗って誇らしげにし、しかも現地民に担がせている図式に「お前ら、何様だよ」などと言いたくなる気持ちに襲われる。
他人の国を、文化を奪っておいて悪びれもせず得意げになる  ――  これが、「侵略」というものなのか。
芸術品としては悪くないのかもしれないが、不快感ばかりが後に残った。

アルパカ
普通にアルパカが街中にいる
民族衣装の娘さんたち
アルパカの赤ちゃんを抱いた民族衣装の娘さんたち

宗教美術博物館の横にはちょっとした広場がある。そこにいる地元民の中には、アルパカを連れている者もいた。外国人にとってはもの珍しく見えるが、日本でいえば犬の散歩並みに、当たり前の行為なのだ。
そんな人々の中に、可愛いアルパカの赤ちゃんを抱いた、色鮮やかな民族衣装の娘さんたちがいた。
「写真はいかが?」
と言うのでありがたく撮らせてもらう。但しタダではなく、チップを要求される。とはいえ、1人につき1ソルとけちるほどの額ではない。いい写真を撮らせてもらったお礼の気持ちもあるので、快く1ソルずつ手渡す。
ファインダー越しに見える彼女たちに感じたのは、異国情緒ばかりではない。
[民族衣装という伝統文化は、何とか生き残ってくれていたか…]
そんな安堵の思いもあった。

コリカンチャ(太陽の神殿)
かつての太陽の神殿も、今は「サント・ドミンゴ教会」に
民族衣装の娘さんたち
「サント・ドミンゴ教会」内部

しかし、そうした思いはすぐに打ち砕かれた。
アルマス広場からメーンストリートであるのエル・ソル通りを南東に進んだ所に、やはりスペイン様式の大規模な教会がある。
現在の名前は、「サント・ドミンゴ教会」。しかし、本来の名前は「コリカンチャ太陽の神殿)」なのである。
町並み
「サント・ドミンゴ教会」から見る町並み
即ち、かつてのインカの人々が信仰の中心としていた神殿だった場所だ。その名残りはやはり僅かばかりの石組みの土台に残るばかりで、外観・内部とも純度100%の西洋風だ。
現地民の信仰の中心を奪い、その跡に征服者の信仰の場を建築する  ――  これを侵略・伝統文化の破壊と言わずして何と言おうか。
高台に位置するこの神殿からは、クスコの町並みを見下ろすこともできる。しかし、そこにあるのは赤い瓦屋根に白や黄色の壁という、やはりスペイン風の家々ばかりだ。
繰り返しになるが、こうした欧風の町並みは私にとって本来、むしろ憧れの的ですらある。しかし、侵略を嫌悪し、西洋中心主義に批判的な私にとって、ここペルーで見る欧風の建物・欧風の町並みはいら立ちの素にしかならなかった。

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