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チベット問題

特集:書籍、映画「雪の下の炎」

31年に及ぶ獄中での拷問・抑圧に不屈の精神で立ち向かったチベット人僧侶パルデン・ギャツォの自伝。

人間の肉体ははかりしれないほどの苦痛にも耐えることができ、
しかも回復する。傷は癒える。
だが、精神が挫けてしまったら、すべては壊れてしまうのだ。

書籍

「雪の下の炎」表紙
著者 :
 パルデン・ギャツォ
出版社:
 ブッキング
価格 :
 ¥2,625
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同書は新潮社より1998年に刊行されたものの残念ながら絶版となってしまい、その後2008年、有志の方のご尽力で「復刊ドットコム」にて復刊リクエストを募ったところ171票を集め、2009年1月復刊されました。
復刊後は安定した売れ行きを見せ、2009年2月には早くも重版が決定しました。

チベット本土における抑圧の様子と、人間の"心の持ち様"を描いた良書であり、万が一にも再度の絶版などということにならないよう、当サイトでは同書を全面的に支持・支援していく所存です。

以下、管理人がamazon.co.jpに寄せたレビューより転載です。

31年――何の年月かによってそれが長いのか短いのかは変わろうが、それが「獄中にいた期間」となると、「長い」ということになるだろう。しかもその人物は政府の思想に従わないという理由で拘束され、服役期間を度々延長され、釈放されたかと思うとまた拘束されてきた"良心の囚人"だった。それを考えると余りに長すぎると言わざるを得ない。
1959年、政治犯として獄中に繋がれた彼は、侵略国当局の執拗な拷問を受け、"思想改造"を迫られる。チベット人がチベット人を虐げるという悲劇さえ繰り返された。
同書には彼のみならず、その他チベット人の"良心の囚人"の悲劇が幾つも記されている。
しかし、彼の思想は決して"改造"させられることはなかった。

「人間の肉体ははかりしれないほどの苦痛にも耐えることができ、しかも回復する。傷は癒える。だが、精神が挫けてしまったら、すべては壊れてしまうのだ」

鋼のような強靭な精神力――これが彼に生きる力を与えてくれていた。彼だけではない。侵略国当局が抑圧すればするほど、チベット人を分断しようとすればするほど、政治囚たちは反発を強め、団結を固めていく。力と脅しによる抑圧で仮に土地を支配できたとしても、人の心と誇りは支配できないのである。同書はパルデン氏の悲劇の人生を描き、侵略国当局の悪逆非道さ、抑圧による人権無視の支配のむごたらしさと虚しさを訴えるものであると同時に、そうした数多くの"良心の囚人"たちの群像劇でもある。

釈放後もパルデン氏の闘いは続く。インドに亡命し、力による抑圧に対する言葉による反撃が始まったのだ。同書を世に出したのもその一環である。
先述したように、侵略国の抑圧に抗う"良心の囚人"は彼だけではない。彼が去った後の獄中でも、自由を求める闘いはなおも続いているだろう。

"雪の国"チベットで自由を求める熱い思い――「雪の下の炎」は消えることはない。

映画

映画「雪の下の炎」 監督:
 楽 真琴
出演:
 パルデン・ギャツォ
 ダライ・ラマ14世
 他
2008年/アメリカ・日本/75分/video/
カラー・白黒/4:3/
チベット語・英語・
イタリア語
原題:
 Fire Under the
 Snow
宣伝協力:
 龍村仁事務所
配給・宣伝:
 アップリンク

≫ 詳細はこちら

※上映は終了しました。


以下、「雑記ブログ」より転載・要約したレビューです。

チベットに人権など存在しません。
私がその生き証人です。

この一言で映画は始まりました。

パルデン・ギャツォさんの生い立ち、逮捕、獄中の様子などが当時の映像・画像も交えて淡々と語られます。
語り手は勿論、パルデンさんが中心。獄中で受けた力と言葉の暴力 ―― しかしそれに屈することなく、正面から立ち向かっていった様子には書籍同様、痛々しさと同時に力強さが伝わってきます。
自らに拷問を加えた者に対しては、普通なら恨みを感じることでしょう。しかしパルデンさんは 「彼らも手心を加えてしまったら、任務を履行しなかったかどで追及を受けることだろう」 と、むしろ許し、哀れみさえ抱いています。チベット仏教の慈悲の心 ―― 単純にその一言で纏めてしまうのは適切ではないかもしれませんが、いずれにせよ、恨みというマイナスの感情を心に蓄積しなかったこともまた、パルデンさんが33年という苦痛の日々を耐え抜くことができた一因なのかもしれません。

そして、書籍「雪の下の炎」出版後の、書籍には書かれていない重要なエピソード・・・

2006年に冬季五輪が行われたイタリア・トリノにおける北京五輪中止を訴えるハンスト。

これが、パルデンさんの獄中生活を訴えることと並ぶこの映画の重要な柱でした。
まるで現場にいるかのような緊張感が伝わってきました。
結局、商業主義にまみれたIOCは全く動かず、パルデンさんたちは思いを実現させることができませんでした。
しかし、決して徒労ではなかったと思います。その決意と実行力はこの映画などで人々の心を打ち、志はしっかりと伝わり、受け継がれていくことでしょうから。

パルデンさんは今でも、デモの先頭に立つなどして「フリー・チベット」を訴え続けています。
専ら獄中生活を描いた書籍が注目を集める中、ともすれば獄中生活に関心が集中しがちになるかもしれませんが、釈放・亡命後の”今”もしっかり伝えなければパルデンさんの全てを知ることはできません。
1998年出版の書籍がカバーしていないその部分を苦心してフィルムにまとめ、伝えてくれた楽真琴監督には最大の感謝・尊敬の念を表するところです。

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